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◆ Just Be Good To Me / The S.O.S. Band(1983) ジャム&ルイスの運命を切り開いた楽曲、そしてプリンスからの独立 [TABU Records]

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 Jam&Lewisのビルボードにおける、R&BとHot100のチャート1位曲を紹介していますが、No2の楽曲も織り交ぜたいと思います。ビルボードのデータを調べたところ、9曲ありました。ほとんどがR&Bチャートでの2位曲でした。HOT-100での2位はジャネットの「Come Back To Me」(from 『Rhythm Nation』)だけでした。
 チャートのトップを獲得できなかったといっても、これらの曲のクオリティーはすごく高い、そして私の大好きな曲も多く、ジャム&ルイスの楽曲の中でも重要曲ばかりでしたので、これらのチャート2位ソングも紹介したいと思った次第です。
 
 今回は、The SOS バンドの「Just Be Good To Me」です。ジャム&ルイスがR&Bで初めて1位を獲得したのは、前回紹介した1984年2月、シェリル・リンの「アンコール」でした。しかしそれより約1年前、1983年6月にリリースされたSOSバンドとのこの曲は、ジャム&ルイスにとって初めてのビックヒット曲となり、運命的な1曲にもなりました。この曲のヒットとクオリティーがその後の彼らのProducer業の成功つながったともいえます。
 
 SOSバンドは、アトランタ出身のボーカル・インストグループ(バンド名はSounds Of Successの略。最初、崖っぷちバンドって意味かと思った)
 。SOSバンドの大ヒット曲は、80年のDiscoヒット曲、Groovyな「Take Your Time」!R&Bで1位。さらにHot100でも3位になりミリオンも記録するメガヒット曲となります。それからしばらくヒット曲にはめぐまれませんでしたが、新鋭のプロデューサーコンビ、ジミー・ジャム&テリー・ルイスを起用しこのヒット曲がうまれるのです。
 

 ジャム&ルイスは、ミネアポリスのカリスマスター・プリンスが作ったバンド、The Timeのメンバーでした。



 ジミー・ジャムはキーボード。テリー・ルイスは、ベース。他のメンバーは、ギター:ジェシー・ジョンソン、ドラム:ジェリビーン・ジョンソン、キーボード:モンテ・モア。ボーカル:モーリス・デイ。パフォーマー、パーカッション:ジェローム・ベントン。
 当時、このバンドはプリンスのコントロール下にありました。バンドといっても、プリンスが作った曲を演奏し、結局はプリンスを引き立てる役目を担った感じ。それにより、それぞれの才能が陰に隠れていましたが、後に各自がプロデューサーやミュージシャンとして活躍することによりこのTimeは伝説的なバンドのような存在になります。それだけの才能を集めたのはプリンスなのですから流石です。
 
 ジャム&ルイスは、タイムの活動と平行してプロデューサー業も始めます。雑誌やネットを見てクレジットが確認できたのは1982年から。このSOSバンドの3rdアルバム『Ⅲ』で楽曲提供した「High Hopes」。Producerはリオン・シルヴァーズ兄弟ですが、ジャム&ルイスもけっこう関わっているのではないかと推測します。この青空を感じるぬけのいいDance曲はR&B-25位のチャートイン。彼らが関わった最初のチャートインシングル曲だと思います。

III+5

III+5

  • アーティスト: S.O.S.バンド
  • 出版社/メーカー: SOLID
  • 発売日: 2013/10/23
  • メディア: CD
 
 この年、タイムとしての2nd『What Time Is It?』もリリース。1stは、バックトラックもほぼプリンスが作って、ボーカルのモーリスが歌った感の強いアルバムでしたが、この2ndではタイムの面々のPlayや主張も感じれるようになっています。そして、タイムの代表曲の一つ「777-9311」がR&B2位のビックヒットとなります。

What Time Is It?

What Time Is It?

  • アーティスト: Time
  • 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
  • 発売日: 1987/07/16
  • メディア: CD

 さらにこの年に発表されたプリンスの『1999』は『パープルレイン』の一つ前の作品ですが、初期のプリンスの集大成のような傑作アルバムだと思います。

1999 -Deluxe-

1999 -Deluxe-

  • アーティスト: Prince
  • 出版社/メーカー: Wea
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: CD

 このアルバムでプリンスの才能がシーンに決定的に認知され、『パープルレイン』の布石となりました。そんなわけでプリンスの成功が、そのままジャム&ルイスに追い風となった面はあると思います。
 
 ジャム&ルイスが本格的にアルバムProduceに参加したのが女性ボーカル・インストバンドのクライマックスの『Girls Will Be Girls』。CDがAMAZONにありました。レアです!


Girls Will Be Girls

Girls Will Be Girls

  • アーティスト: Klymaxx
  • 出版社/メーカー: Unidisc Records
  • 発売日: 1996/07/16
  • メディア: CD


    9曲収録中、4曲をProduce。ライターとしては1曲。そのサウンドProduceを買われた感じです。
 
 翌1983年に入ると、ジャム&ルイスへのプロデュース依頼がさらに増えてきます。Gladys Knight & The Hips、シェリル・リン等。この辺はプリンスの影響もあると思われます。プリンスが関わったバンドとしてザ・タイムがあり、その影響下にあるとみられる同郷のジャム&ルイスにプロデュースを依頼することにより、時代の先を走るプリンスサウンドを取り入れる事ができるという思いがアーティストたちにあったかもしれません。
 逆に、プリンス自身はミネアポリスのオンリー1の存在は自分だという思いもあったのかもしれません。こうして傘下のジャム&ルイスが自分を差し置いて活躍するのを快く思っていなかったのかもしれません。
 そんな状況下で、ジャム&ルイスはProduce業に精を出します。その作品が、SOSバンドの4th『On The Rise』でした。

On the Rise by Sos Band (2013-10-23)

On the Rise by Sos Band (2013-10-23)

  • アーティスト: Sos Band
  • 出版社/メーカー: PSP Co Ltd
  • メディア: CD

 このアルバムのA面(昔のLP)は、80年代前半のR&Bの傑作品ともいわれています。そしてこのA面の3曲「Tell Me If You Still Care」(R&B-5位)「Just Be Good To Me」「For Your Love」を手がけたのが他ならぬジャム&ルイスなのです。そして1stシングル「Just Be Good To Me」がR&B-2位のビックヒットとなるのです。
 
 この頃、生楽器からドラムマシーン(
TR-808、リン)サンプリング機器(ミラージュ)、シンセサイザー(ヤマハDX-7)等のテクノロジーへの移行の時期でした。初期は、テクノロジーの目新しさもあって、こぞってテクノロジーを導入した。テクノロジーを重視しすぎて生楽器とのバランスの悪さも生じた。それこそ同じキーボードや、サンプリング機器、ドラムマシーンを使うから似通ったサウンドにもなる。それから徐々に、生楽器とのバランスが良くなっていくわけで、それこそマイケル・ジャクソンの『スリラー』なんてそのバランス感覚は絶妙。

 そんなわけで、こういう機器があればミュージシャンをそろえなくとも、一人でもトラックを作ることを可能にした。ただこのテクノロジーに抜群のセンスで使いこなしたのがジャム&ルイス。さらにプリンスもそう。(『サイン・オブ・ザ・タイムズ』は最高だな~)
 象徴的なのは、それまでクインシー・ジョーンズのような生楽器をアレンジ、ProduceするスタイルのProducerが最優秀賞を受賞する中、1986年度、この打ち込み系のジャム&ルイスが最優秀Producerとして選出されるのです。
 さらにジャム&ルイスの素晴らしさは、ライターとしても魅力的な曲が書けるという事。このアルバムの1曲目は「Tell Me If you Still Care」という感傷的で透明感ある曲で始まります。チャート的にはR&B5位ですが、やはりジャム&ルイスを代表する楽曲。その曲に抜群のセンスで生み出したトラックをのせるわけです。そして2曲目にシンセグルーブがうねる「Just Be Good to Me」、3曲目が「For Your Love」。今聞くとそこまで新しさは感じませんが、当時はプリンスにも通じるミネアポリス・ファンクしてます。
 
 そういう感じで、ジャム&ルイスはこのアルバムの制作に集中していたのですが、タイムの活動もあるわけです。ちょうどプリンスも1999ツアーの最中。オープニングをつとめるタイムとPrinceで全米を熱狂させていました。
 タイムはプリンスの支配下にあるバンドなのです。ジャム&ルイスもタイムのライブに行こうとしますが、悪天候のため飛行機が飛ばず、穴をあけてしまうのです。そしてプリンスの怒りを買い、タイムからの脱退を命じられます。当然と言えば当然かも。
 プリンスとしてもいろいろな思いはあったはず、彼もファンを大事にする人。穴をあけてしまったジャム&ルイスに怒った面もあると思うのですが、やはり外部でProduce活動を精力的にしているジャム&ルイスの活躍も快く思っていなかった面もあるように思います。当時のプリンスは、自分のコントロール下に置けないものは切り捨てた印象をもちます。後に彼も成熟し、そういった自分のスタンスを省みるようですが。(まー『パープルレイン』もそんな彼の孤独感も描かれていますもんね)いや、もしかしたらあえてProducerとして独り立ちさせるために彼らをバンドから外したのか!?その辺の真実を知りたいな~。ただ遅かれ早かれ、ジミーとテリーの2人はプロデューサーとして独立する事にはなったと思います。
 
 そんなわけで退路を断たれた感じのジャム&ルイスですが、このアルバムからの「Just Be Good To Me」がフロアーでバカうけ、R&Bチャートも駆け上がり2位となるビックヒットとなります。TR-808のリズムを軸にうねる重厚なベースGroove、Coolなシンセ音。Vocalのメアリー・デイヴィスとの相性も抜群です。彼らもこのA面での3曲の仕上がりとヒットという結果にプロデュース稼業でやっていける自信をもったといいます。
 
 この曲は、やはり通には好まれるみたいで、クライブ・デイヴィスが第二のWhitneyにすべき売り出したデボラ・コックスも、お気に入りみたいでダラス・オースティンのProduceでカバーしています。

センティメンタル

センティメンタル

  • アーティスト: デボラ・コックス
  • 出版社/メーカー: BMGビクター
  • 発売日: 1995/11/16
  • メディア: CD

 さらに以前紹介しましたが、日本にもこのトラックを見事に再現している才人がSOUL’d OUTのTrackmaster-Shinnosuke(シンノスケ)。

We Love Dance Classics vol.1

We Love Dance Classics vol.1

  • 出版社/メーカー: SME Records
  • 発売日: 2005/03/24
  • メディア: CD

 このアルバムは、ダンスクラッシックの定番曲を、久保田利伸などR&Bを愛する日本のアーティストがカバーしたコンピ作品。その中に「Just Be Good To Me」が収録されます。日本で活躍する実力派セッションシンガーのメロディー・セクストンを迎え、あえて80’Sの打ち込み感を忠実に再現しつつ、Shinnosukeのエッセンスも加わり見事な仕上がりです。重低音のグルーヴも素晴らしい。普通に聞いたら日本人が作ったTrackに感じない。ダラスのトラックよりもいい。SOUL’d OUTのデビュー曲「Flyte Tyme」もジャム&ルイスFreakならお馴染みの彼らのプロダクション名(でありタイムの前のバンド名)ですが、そのイントロも「Just To Be ----」のイントロGrooveにインスパイア―されているのを感じます。
 
 この後、ジャム&ルイスは、SOSバンド、アレクサンダー・オニール、シェレールらが所属する
TABUレコードでさらに良質な作品を次々と生み出し、さらにジャネット・ジャクソンとの出会いでNo1プロデューサーとして駆け上がっていくわけですが、この「Just Be Good To Me」なくして後のジャム&ルイスはないのです。

☆SOS BANDのBest盤であり初期のJam&LewisのBestともいえる、おすすめ!

Best of
クリエーター情報なし
Universal Int'l


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